今回はISO9001に登場する7原則について、その重要性について解説します。
ISO9001の認証取得をするにあたって、7原則が重要という話は聞いたことがあるかと思いますがその具体的な理由について知らない方は多いのではないでしょうか?
本記事は以下の方を対象にしています。
・ISO9001の7原則について知りたい
・ISO9001の運用がうまくいっていない
・ISO9001と9000の違いは?
以下記事で解説していきます。
Contents
ISO9001における7原則とは?
ISO9001における7原則とは何かと言う事ですが、これは品質マネジメント7原則の略です。
7原則の具体的な内容は以下になります。
・顧客重視
・リーダーシップ
・人々の積極的参加
・プロセスアプローチ
・改善
・客観的事実に基づく意思決定
・関係性管理
どれも組織のパフォーマンスを向上させるにあたって重要なことです。
これは世界の頭の良い人たちが組織のパフォーマンスを向上させるにあたって何を重要視すればいいのかを考えた結果出た結論なのです。
これは何も組織についてだけでなく、自分の家族や自分自身の問題について改善したい点があったとしても役立てることがでるんです。
各内容について以下記事で解説していきます。
【7原則】①顧客重視
まず7原則の顧客重視についてですが、これは顧客の要求を満たした製品やサービスを提供するということです。
これには製品やサービスの質だけでなく、価格や納期、アフターサービスなど様々な要素を含むことがポイントです。
例えば高品質のテレビであっても、価格が高すぎれば購入の対象外となるでしょうし、品質も価格も満足できても納期が1年先になってしまえば新しいテレビを1年間待たなくてはなりません。
こういった条件を全て満たすことが顧客重視のポイントになってきます。
また、購入した商品に欠陥があった際にアフターサービスが迅速であれば「あの時は不良品だったけどまた購入しようかな」となるわけですし、 その逆に商品に満足していても保証期間が1週間しかない商品は不安になりますよね。
ISO9001の規格要求事項にも顧客重視について以下の記述があります。
トップマネジメントは、次の事項を確実にすることによって、顧客重視に関するリーダーシップ及びコミットメント を実証しなければならない。
a) 顧客要求事項 及び適用される法令・規制要求事項 を明確にし、理解し、一貫してそれを満たしている。
b) 製品及びサービスの適合、並びに、顧客満足を向上させる能力に影響を与え得る、リスク及び機会が決定し、取り組んでいる。
c) 顧客満足の向上の重視が維持されている。
また、ここで言う「顧客」とは製品を購入する消費者だけでなく、全ての利害関係者を指します。
つまり製造に関わる人や株主や取引先まで多岐に渡るのです。
【7原則】②リーダーシップ
7原則の2つ目はリーダーシップです。
7原則の中でもISO運用において最重要なのがこのリーダーシップと言えるでしょう。
もうね、他の原則が全て出来ていても、リーダーシップが無かったら全部うまくいかないと言っても過言ではありません。
経営者であるリーダーが掲げた目標や方針は指紋を社風となります。
これはISOに対する取り組みも然りで経営者が示した方針等あるべき姿がどれだけ明確で社内に浸透しているかでその組織のパフォーマンスは大きく変わります。
リーダーが適当で不明確な方針を掲げていた場合、従業員は何を目標に仕事をしたら良いのかが分からなくなってしまいます。
だからこそISOにおいて最も重要なのはリーダーシップなのです。
またリーダーシップについては経営者だけが発揮すべきであると言うイメージを抱きがちですが、これはすべての回そのリーダーに言えることです。
つまり経営者だけでなく各部署のリーダー格、現場でのリーダー格、アルバイトのリーダー格、など全階層でリーダーシップを発揮されないといけないのです。
【7原則】③人々の積極的参加
7原則の次の項目として、人々の積極的参加が挙げられます。
組織で働く従業員は、リーダーが掲げた目標に対して、積極的に参加する必要があります。
これが崩れるとISOだけでなく組織全体が成り立たなくなっちゃいますよね。
例えばある部門の管理者が経営者の掲げた奉仕に対してあまり積極的に参加しなかったとします。
つまり「目標達成なんて適当にやっておけばいいよ」と言う管理者であれば組織が混乱して成り立たなくなってしまということです。
よってISOでは経営者が掲げた目標に対して社員が一丸となって突き進んでいくことが重要になります。
これはリーダーシップで記載した全ての階層のリーダーシップの発揮とも重なる部分ですが、まず全階層のリーダーから積極的にトップマネジメントの掲げた目標を組織に落とし込むことが重要です。
【7原則】④プロセスアプローチ
7原則の1つにプロセスアプローチがあります。これは業務などの流れを無駄なく組織に適応させるためのものです。
業務は各プロセスがあり、それが相互に関係しています。
例えば給与計算であれば、アウトプットは給与明細や給与そのものなわけですが、それを作成するに当たっては様々なデータが必要となってきます。
残業時間や社宅費など、生活スタイルによってインプット情報は変わってきます。
そのインプットの元となる情報もまたどこかから出たアウトプットというわけです。
これらの情報を相互に連携させて無駄なくひとつの流れにしていくには、プロセスアプローチの考え方が極めて重要になります。
なぜならそれに沿って組織は人、金、モノ、情報を準備する必要があるからです。
【7原則】⑤改善
7原則の1つに改善があります。これは組織は絶えず提供する商品やサービスを改善して行きましょうね!ということです。
ポイントとしては現状に問題がなくても改善できる点はないのかを絶えず考え続けることです。
良い例がスマートフォンのアップデートでしょう。
特に使用に問題がないとユーザーが感じていても、世界のユーザーの様々な意見を取り入れた上でアップデートが行われます。
その結果、ユーザーは改善された最新の機能を使うことが出来るわけです。 とは言えたまにアップデートされる前のものが良かったな、、ってこともありますけどね。
私の場合、SUUNTO 9というGPSウォッチを使用しているのですが、この連携用のスマートフォンアプリが最初はかなり使いづらかったんです。
しかし現在は改善がどんどん進み、かなり使いやすくなったんです。
【7原則】⑥客観的事実に基づく意思決定
7原則の1つとして客観的事実に基づく意思決定が挙げられます。
これは、言葉だけの漠然としたものではなく、組織としても意思決定をするには数字やこれまでの結果などのデータ(客観的証拠)に基づいて判断しようということです。
あなたが上司の立場で何かしらの意思決定を行う場合、
「〇〇さん、今度の新商品ですが直感的に①の生産方法の方がいいと思います!」という部下よりも、
「過去に〇〇というデータがあるので、今回の新商品の生産方法としてはラインの特性上①の生産方法を取った方が良いかと思います。」
という提案をしてくれる意見の方が信憑性もありますし、判断しやすいかと思います。
つまり組織の意思決定は直感や抽象的なものよりも、判断の根拠となるデータを活用しましょうということです。
よって日々の業務でも、検証などで得られた具体的な数字はどこで役立つか分からないので、きちんと収集しておきましょう、どこで使えるか分からないですからね。
【7原則】⑦関係性管理
7原則の1つとして関係性管理が挙げられます。
これは組織を取り巻く利害関係者と良好な関係を築くということです。
ここで言う利害関係者とは
・従業員
・消費者
・株主
・生産拠点であれば近隣住民
・マスコミ
・自治体 この辺りを指します。
組織の活動としてそんなに重要なのか?と思われがちな関係性管理ですが、これが結構重要です。
例えば近隣住民について例を挙げてみます。
工場を建てる時などは、近隣住民や自治体と様々な交渉をしながら良い関係を築く必要があります。
例えば私がかつていた会社では、工場から騒音や匂いの強いものが出ない様な設備を増強したり、敷地内に野球場を設けて週末に少年野球の練習場として提供していたりしていました。
こういったことで近隣住民とのコミュニケーションが生まれ、より良い関係性が出来てくるのです。
7原則が理解できていないとどうなるのか?
7原則が理解できていない状態で、ISOを取得しようとすると「取得しても意味がなかったな。。」と感じてしまうかと思います。
特にこれはISOを通じて組織のPDCAを回して改善につなげていこうという組織にとってはかなり痛手かと思います。
認証取得証だけあれば良いという組織であればそれでも問題ないと思いますが、本来のISOの目的からすると認証取得を行うのであればパフォーマンスの向上を期待したいところです。
これは審査する側と審査される側でも異なります。7原則を理解できていないとどうなるのかを
・審査員の場合
・組織の場合
以上に分けて解説して行きます。
【7原則が理解できていない】審査員はどうなる?
審査員が7原則を正しく理解していない場合、逐条的な審査しかできなくなります。
その結果、審査される組織もISO審査を受診してもあまり効果を感じないものになってしまい、結果的にあまり良い結果を生みません。
認証審査機関を探す際にも、組織のパフォーマンス向上を目指すのであれば、審査員の力量の高い審査機関を選択すべきでしょう。
【7原則が理解できていない】組織はどうなる?
組織が7原則を理解できていない場合、結果的にISO運用は上手くいかなくなります。
「なんだかISO9001の運用がうまくいかない。。」と感じる場合は7原則を見直すことをオススメします。
腕のいい審査員であれば7原則を起点に指摘をするので、組織は気が付くことが出来るのですが、規格要求事項から受診しようと準備をする組織や、ISOの認定のみを目的とする審査ではどうしてもここが抜けがちです。
しかも7原則の遵守はトップが率先しないとできないものです。
だって7原則に記載されている内容って、トップが率先しないと進まないものばかりですよね? リーダーシップとかイチ社員が上層部に提唱できないですよね笑
これはHACCPが上手くいかない場合にISO22000やFSSC22000を導入することで組織的な改善を図ることにも似ています。
HACCPは食品安全の運用に特化したものですので、ISOの要求事項にある様な組織的な改善まで言及されていません。(最近のHACCP審査ではそこまで言及されることもあります) ISO22000であればISO9001の要求事項も入ってきますので、当然7原則を導入することは前提条件となりますからね。
まとめ
今回はISO9001における7原則について解説しました。
ISO認証を組織のパフォーマンス向上に役立てるのであれば7原則を意識することは極めて重要です。
これからISO認証を進めたい組織やISO認証はしたものの、その効果が十分発揮されていないと感じる方は是非とも7原則から見直してみてくださいね。
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