今回は医薬品工場や食品工場で見かけるGMPについて解説致します。
というのも、最近はコロナワクチンの関係もあり、GMPについての話題が結構周りでも出ています。
確かにこれまでの医薬品の歴史を考えると、今回のワクチンの話題と一緒にGMPが注目されるのは納得できます。
まずGMPの歴史について振り返ってみましょう。
GMPとはFDAが主体となって作った規格で、製造業者および製造販売業者に求められる「適正製造規範」(製造管理・品質管理基準)のことです。
なぜGMPが作られたのかというと、ある薬による薬害事件がきっかけでした。
すでにご存じの方は多いかと思いますが、サリドマイドによる薬害です。
サリドマイドは睡眠薬や痛み止めとして優れた効果を発揮する薬で、1950年代に多く使われていました。
睡眠薬以外には妊婦さんのつわりを抑える薬として使用されており、効果も非常に高いことから広く普及していました。
日本でも使われていました。
しかし、このサリドマイドは産まれてくる胎児に悪影響を与えることが分かり、「アザラシ症」という症状を持った子供が多く誕生したという痛ましい薬害事件です。
ちなみに現在もこのサリドマイドは使用されており、妊婦への使用は禁止されています。
こういった事件が発生すると、今回緊急承認されたワクチンを打つことに抵抗を覚える方が多いというのも頷けます。
自分で歴史を振り返りながら必要な情報を拾集選択しなくてはならないですよね。まあそれが難しいんですが、人生1度きりですしなるべく背負わなくてもいいリスクは避けたいものです。
とは言えワクチンを打たずに重篤化してしまうことも問題だから非常に悩ましいところです。
この事件から、こうした事件を2度と発生させないようにアメリカの議会がFDAに対して、GMPを作成する様に申し立てをして、最終的に1960年代にGMPが誕生しました。
この後、WHOがGMPの設定を決議し、日本でも1970年代に厚生労働省が導入を開始したのです。
代表的な薬剤についての動画を以下に貼り付けておきます。
さて、GMPの歴史については解説しましたが、次GMPがどの様なものなのかについて解説します。
GMPとは適正造規範の略で、どちらかというと医薬品の製造に関わる基準であるという印象が強いですよね。
大抵調べると食品の情報よりも医薬品の情報が出来ますし、食品工場ではPPやSSOP等の形で定着している為GMPという形で見かけることはあまりないんじゃないですかね?
しかし、GMPはHACCPで重視される一般衛生管理と同じく、工場内の前提条件として管理するのに非常に重要な管理基準です。
このGMPには3つの原則があります。
・人為的な誤りを最小限にする
・汚染および品質劣化を防止する
・より高度な品質を保証するシステムを設計する
という内容です。
日本のHACCPやISO22000に登場する前提条件プログラムの様なものです。以下でそれらの違いについて簡単に解説します。
GMPは食品や医薬品工場の前提条件についての規定事項で、食品工場の一般衛生管理に似たものであると解説しました。
HACCPには前提条件としてPP、PRP、OPRP、SSOP、一般衛生管理プログラム、食品衛生の一般原則など様々な呼ばれ方があります。
これらはHACCPに必要なCCPが正しく機能する様に設定されたもので、製造環境の整備や衛生確保に重点をおいたものです。
清潔な環境であれば清潔な商品は自然と作られるという考えを元に考案されたものですが、欠点も存在します。
それは要求事項のみが示され、それを達成するための具体的手法については規定されていないということです。
一方、PPやSSOPなどには目標達成には具体的にどの様なことに注意すべきかが書かれており、取り組む側としては参考になります。
要求事項だけ書かれていた場合、誤った対策を立ててしまう可能性があるからです。
GMPは国ごとに位置づけが異なります。
例えばカナダであればGMPはPPと同じことを指します。
一方、日本の場合GMPは製造するにあたって〇〇な状態が好ましいのかという「目標」が記載されており、それを実現するための具体的な手順はSSOPやPPで定めているという仕組みです。
管轄する行政も当然ながら国によって異なります。
例えばアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は食べ物と薬について管理している所ですが、日本の場合、医薬品については厚生労働省が管轄しており、食べ物については農林水産省が管轄しているのが現状です。
今回はGMPについて解説致しました。
医薬品メーカーでは一般的ですが、食品メーカーなどではあまり定着のない言葉ではないでしょうか?
ただ、食品も医薬品も人間の身体に入るものなので、医薬品まで細かな管理基準までは必要ないにしても、汚染の防止や適切な製造基準を遵守する点においては共通するところも多いです。
安全な商品づくりの為に適切な管理基準を定めて守るのは定着まで難しいところではありますが、地道に頑張りたいところですね。
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