食品工場や飲食店で義務化が進んでいるHACCPですが、HACCPについてまだ詳細を把握できていない事業所の方もいるのではないでしょうか?
HACCPとは品質管理手法の1つですが、通常の品質管理とは異なる考えに基づくものです。
通常の品質管理では、製品の検査結果を元に統計学などを用いて前日や前々日の衛生管理の状況を把握するものです。
一方HACCPによる品質管理は、事前に対策を立てて不良製品を作らないようにする考えの衛生管理手法です。
つまりHACCP計画に基づいて正しく製造された商品は理論的には安全な商品になるというものです。
HACCPはHA+CCPという考え方が正しく、最初にHA(Hazard Analysis)が来ます。つまり具体的には製造加工工程を経て、最終製品の保管流通消費に至るまでの食品の各過程で考えられる危害に重点を置いたものなのです。
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HACCPの中で重要なのが7原則と12手順です。
特に食品安全に必要な考えは7原則で、これをしっかり理解した上でHACCPに取り組まないと結果的に遠回りになったり、効果的ではない形だけのHACCPになってしまします。
HACCPだけに限ったことではありませんが、形だけの規格ほど無駄なものはありません。
構築にも時間がかかりますし、ただでさえ毎日の食品製造で忙しい人たちにとっては苦痛でしかありません。
せっかく時間を割いて取り組むのであれば効果的なHACCPにしたいですよね。
冒頭のHACCPの解説で、事前に計画を立てると書きましたが、この計画に必要なのが7原則であり、この7原則に基づいてHACCP計画が策定されます。
HACCPを実施する上で必須となる要件を示したもので、機能させるには各要件が全て適切に行われる必要があります。
よくHACCPは食中毒やトレーサビリティに効果的だと言われますが、これも7原則の内容によるものです。
本記事ではHACCPの7原則と、その内容について解説したいと思います。
HACCPの7原則には以下の内容があります。
原則①危害分析
原則②CCP(重要管理点)の設定
原則③管理基準CL(許容限界)の設定
原則④モニタリング方法の設定
原則⑤修正処置の設定
原則⑥検証方法の設定
原則⑦記録の維持管理
先に解説しましたが、HACCPを正しく機能させるには、各原則が適切に行われる必要があります。
以下で各原則の概要について解説したいと思います。
まず原則①は危害分析です。
名前の通り、危害分析とは食品に使用する原材料や工程にどのような危険(危害)があるのかを明らかにすることです。
危害は生物学的、化学的、物理的の3種類に分類されます。
具体的に危害分析では分析して、危害の一覧を整理したリストを作成するまでを指します。私がいた会社では危害総括チャートという名称で運用していました。
危害のリストを作成するためには入荷する原材料についての情報は必要不可欠ですし、自工場にどの様な工程があり、その工程で起きる可能性のある危険要因は何なのかも把握しておく必要があります。
危害要因の中には重篤性の高いものとそうでないものがあり、危害分析では両方を全て洗い出すところから始めます。
その中でも重篤性の高く発生頻度も高いものに関しては、管理上での重要点(CCP)や防止の方法を明確にしておく必要があります。
それだけ重要な管理点を設定するので、該当する危害が重篤なのかそうでないのかは根拠立てて行う必要があるのです。
危害分析はHACCP7原則の最初に来ているだけあり、非常に重要です。
この後の原則②に「CCPの設定」がありますが、このハザード分析がいい加減であると適切なCCPを決定することは出来ません。
それだけ危害分析は重要な工程なのです。
原則②はCCP(重要管理点)の設定です。
ここでは、原則①の危害分析で挙げられた危害を消し込む工程をCCPとして設定します。
CCP管理の対象になるのは発生の可能性が高く、発生したら重篤なものです。
例えば生肉であればそのまま食べることは出来ないので、加熱と速やかな冷却をしないと安全に食べることは出来ません。
また、CCPに設定すべき工程は、以降の工程で管理手段がなくなる製造工程です。
つまり生肉を加熱して、その後にオーブンでローストする工程があるとするならば、最後の加熱工程はオーブンでのロースト工程がそれに該当するので、ロースト工程がCCPになります。
また、CCPの設定では発生するリスクについても記載しておく必要があります。
具体的な例としては、生肉の加熱不足や、商品の滞留や冷却設備のキャパシティを超えた製造により緩慢冷却になり微生物が増殖するといったことです。
CCPとは言い換えれば食品の安全性を確保する上で特に重要な抑えるべきポイントです。
HACCPで大事なのはこのCCPを製造過程のどこに設定するかを正確に判断することですので、設定する際はよく検証しましょう。
次にCCPを管理するための基準を設けます。
ここでのポイントは科学的・客観的に基づいた具体的な数値が必要だということです。
つまり、危害を防止又は許容できる範囲まで低減する為の基準を明確にするということです。
CLを設定した際には、CLが製造工程において適切であるかについて確認することも重要で、これを妥当性と呼びます。
次にモニタリング方法の設定についてですが、これはCL測定の管理方法と頻度を設定するということです。
モニタリングにより、CCPが適切に管理されているかどうかが分かるので、モニタリング方法を決めることは重要です。
例えば釜でスープを作る際は、加熱と冷却がCCPとされることが多いのですが、品温を測定する際の測定基準や測定ポイント(温度計を差し込む場所)、測定の頻度(バッチ毎なのかなど)を明確化するということです。
次に是正処置の設定です。
モニタリング方法が固まり、製造を続けていると問題が発生することがあります。
修正処置の設定では、製造工程で逸脱が発生した時に正常な状態に戻すための処置と、その商品の取り扱い方法を設定しておく必要があるのです。
それらを決めておくことで製造時に問題が発生した時にも迅速に対応することが出来るようになります。
次に検証方法の設定です。
CCPとモニタリング方法を設定すればHACCPを運用できるかと言えばそうではありません。
実際に設定した内容が現場で正しく運用されていなくてはならならず、検証方法を設定する必要があるのです。
これは、現場での製造でHACCPプラン通りに作業が運用されているかどうかを確認する方法を定めてくださいということです。
先にも解説した通り、HACCPによる品質管理は、事前に対策を立てて不良製品を作らないようにする考えの衛生管理手法であり、HACCP計画に基づいて正しく製造されていることが大前提なのです。
現場での運用状態を確認することで、そもそも現場で運用不可能なHACCPプランを運用してしまっていることが判明することがあります。
その場合、現場で確実に運用できるHACCPプランを構築すればいいのです。
このように決定したHACCPプランの運用状況を現場で確認することは重要ですのでしっかりと検証してみてください。
次に記録の維持管理です。
HACCPプランで決められたモニタリング方法や修正処置の記録は、HACCPシステムが適切に運用されていることの証明になります。
つまり、問題が発生した時に適切な処置がとられたことの証明にもなるのです。
また、トラブルにより回収が発生した時にも、トレースがこの記録により可能になります。
文書や記録は、ただ保管しておけばいいというわけではなく、保管責任者、保管期間、保管場所まで明確にしておく必要があります。
HACCPを工場で運用するには、7原則が全て満たされている必要があります。
是非これらの原則をよく理解して取り組んでみてください。
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